生涯君ヲ愛ス



生涯君ヲ愛ス
「何してるの?」 「・・・灰原・・・」 蘭の結婚騒動の後、コナンは博士の家に来ていた リビングのソファーに寝転がってTVをつけ でも、どう見ても、TVを見ている様子ではなかった 「・・・・・ショックだった?」 「あぁ?」 「彼女の事よ、まさか結婚まで話が進んでいるなんてね」 その言葉に、コナンはおき上がりソファーに座った 「・・・博士に聞いたのか?」 「えぇ、さっき」 博士はさっきまで何かの研究をしていたが 突然の電話の呼び出しで出かけてしまっていた 「それとも、以前から知ってた?彼女と先生の事」 灰原のその言葉に、コナンは天井を仰ぐと 「あぁ」っと間の抜けた返事を返してきた 灰原は、少しため息まじりに笑みを浮かべると コナンに近づく 「いつもそう。あなたは全て1人で背負い込もうとしてる」 灰原のその知ったような口ぶりに、コナンは気を悪くしたのか 少しフテクされたような表情になった 「そんなんじゃねーよ。  結局、俺はあいつから逃げちまったんだからな」 「・・・逃げた?」 首をかしげる灰原に、コナンは情けなさそうに苦笑した 「お前が”解毒剤”を完成させた時に、俺が元の姿に戻ってたら  まだ蘭を、引き止める事だってできたよ。でも・・・・  『新出先生』の存在で、俺はどこかですっげー安心しちまったんだ  情けねーだろ?あれだけ”待ってろ”って言っておきながら、  『安心』しちまったんだよ。」 蘭がこのまま、新一という存在を忘れ。 いや、”新一を好きだった”という事を忘れてはくれないだろうかと ”過去の記憶”として残るほど、『新出先生』を愛してはくれないだろうかと そう、自分の負い目を押し付けるような考えを・・・ 「これで・・・・・・」 コナンは途中まで言いかけて立ち上がり、灰原の手の平にカプセルを乗せた 「・・・解毒剤?」 以前、もうずいぶん前に灰原が完成させた薬 これをコナンに渡した時、即座に飲むと思っていた 待ちにまった解毒剤なんだから でもコナンは、飲むどころか灰原にこう言ったのだ 「おめーの事、好きだよ」っと。 それが何を意味するのか、そして解毒剤を飲まない理由は何なのか それをいくら問いただしても、彼は何も言おうとはしなかった でも、今回でそれが全て解き明かされた 「待ってたの?彼女と先生がこうなる事を、彼女の中からあなたの存在が  ”過去の人物”になる事を」 「あいつをできるだけ傷つけたくなかったんだ、  これだけ傷つけておいて、今更・・・だけどな」 コナンはそう言うと、ポケットの中からもう1つ解毒剤を取り出した 「私にも、元に戻れっていうの?」 灰原は、自分の手の中にある解毒剤を見つめた あの組織が捕まった。 そう、それはつい最近。 組織の人間もそれを解かっていたのか、 証拠となるモノをずい分処分していたおかげで”シェリー”であった”宮野志保”も データーも、存在すらもバレずにすんでいた。 だから、今元の姿に戻っても何も問題はないのだ そう、ある事をのぞいては・・・・・。 「ジンの事か?」 コナンの言葉に、灰原はピクリと肩を震わせた 警察にも、その存在はバレていて、 指名手配された今も、姿をくらませ逃げつづけているジン。 その理由は そう、『シェリーを殺すため』 ジンが捕まらなければ、元の姿に戻る事なんてできない 「アメリカで暮らそうか?」
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