生涯君ヲ愛ス
沈黙を破ったそのコナンの言葉に、灰原は驚いて顔を上げた
「父さんと母さんのいるアメリカで。ここには思い出が・・・多すぎっから」
コナンはそう言うと、今まで見せた事のないようなやわらかな顔で笑った。
それは、もうずいぶん前から考えていた事のように
真っ直ぐな瞳で。
「ジンの事なら心配いらねーよ。警察が一番やられてマズイのは海外逃亡だ
空港は警察の警備だらけだろうし、そんな所にジンがのこのこ現れるとも思えねー
頭のキレる奴だから、余計にな。
博士も賛成してくれたよ
博士は・・・おめーの幸せを1番に願ってるからな」
コナンはそう言うと、そっと灰原を引き寄せ抱きしめた
「幸せに・・・・なれんだよ」
『幸せ』
その言葉が、灰原の中で大きく響いた
手に入らないものだと思ってた
望んではいけないものだと思っていた
それが今、目の前にいる彼と叶えられようとしていた
灰原はコナンの背中に手を回すと力いっぱい抱きしめた
”幸せになれんだよ”
その願いをかみ締めるかように・・・・・
2日後
博士は深夜に2人を車に乗せて空港へと向かった
もうすっかり元の姿に戻った新一と志保を乗せて
博士は空港の入り口までは来たものの
『別れがつらくなるから』とそのまま車で戻った
灰原・・・志保は、遠くなる博士の車を見えなくなるまで見送ったあと
新一と2人で歩きだした
そこには、新一の両親が待っていてくれる
事情を知った新一の両親が、心配でわざわざ日本まで迎えにきてくれていた
志保は新一の両親に挨拶をすると、
新一の両親もうれしそうに迎えてくれた
幸せをつかもうとする息子たちに
それを予感させるような笑顔で・・・・・。
その後、飛行機の時間まで新一の両親が空港での買い物に行ってしまった
「あ、そうだ」
新一は思い出したように声を上げると、ポケットの中から石を2つ取りだし
1つを志保に渡した
「・・・何?」
志保はそれを空にかざしてみるが分からずに首をかしげる
「博士から。古い友人にもらったものらしくて、
ダイアモンドの原石らしいぜ。」
「ダイアモンド?」
志保は原石を眺めて
そしてポツリとつぶやいた
『永遠の絆』
「・・・何だそれ?」
今度は新一が首をかしげる
「パワーストーンの意味よ。ダイアモンドは『永遠の絆』なの」
志保のその言葉に、新一も原石をながめる
「博士がそんな気のきいた事知ってたかどうかは分かんねーけど・・。
大切にしろって事だな」
そう言って笑った新一に、志保は「そうね」っと笑い返した
「私が生まれ代わった時には、これは光輝いてるかもしれないわね」
「なんだよそれ?」
新一のその反応に、志保は少し笑うと、
ダイアモンドの原石を右手できつく握り締めた
「私は今から、今までにない幸せのために生きていくけど
この原石と同じように、過去を消して輝いたりはできないでしょ?
だから、生まれ代わった時”過去”も何もかも浄化できていれば
きれいに輝けるだろうなって・・・・」
志保のその意外な言葉に、新一は一瞬言葉を失ったが
やがて笑みを零すと、そっと志保にキスをした
生まれ変わりなんて、そんな事信じてたわけじゃなかったけど
今は、信じてもいいかなって、
素直にそう思えた
「その時は、俺も傍にいてやるよ」
遠い未来の約束
そのときがくる事を願いながら・・・・・・。
こんな幸せがいつまで続くかは分からないけれど
少しでも長い間続けばいいと祈っていた
そう、もう少し、あと少し
続くと思っていた
・・・・・・のに・・・・・・
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