生涯君ヲ愛ス
それは、新一が飲み物を買ってくると志保と離れた時の事
「久しぶりだな、シェリー?」
全てを凍らせたその声
懐かしい、もう2度と聞きたくはなかったその声が
志保の背後から聞こえた
・・・ジン・・・・
絶望感と恐怖で生きた心地がしなかった
まさかこんな所で、
こんなタイミングで・・・・・。
「逃げられるとでも思っていたのかシェリー?」
「・・・どうして・・・」
やっと出たその言葉に、ジンの冷たい笑い声がする
「死んだはずの工藤新一が生きていたって事を聞いてな
怪しいと思うだろ?あいつの死亡確認を書いたのはお前だったな?」
「彼は・・・関係ないわ・・・」
志保がジンの言葉に反論できるのはそれが精一杯だった
忘れようとしていた記憶がよみがえる
(逃げられるわけなんてなかったのよ)
そんな事さえも忘れていたなんて。
「・・・殺すんでしょ?裏切り者を」
そう言うと、志保の背中に冷たいものが押し付けられた
”銃口”
志保は、深く息を吐いた
「私を射殺したら、あなたはすぐにでも逮捕されるわ
警官が、あなたを捕まえるためにウロウロしているもの」
志保の言葉に、ジンは冷たく笑う
「俺はお前を殺せさえすればいいんだよ、シェリー」
ジンのその堅く誓われたような言葉に
志保は身が凍る思いがした
まさかここまで、恨んでいたなんて・・・
(・・・もう終わりだ)
そう確信して、志保は右手に持っていたダイアモンドの原石を
力いっぱい握りしめた
『永遠の絆』
そんな子供だましを
精一杯信じた
向こうから、缶コーヒーを持った新一が来るのが見えた
志保を探すように周りを見渡している
(もう、これで最後ね・・・工藤君)
新一の顔を見て、ひどく安心できた志保は
諦めて、目を閉じた
(幸せだったよ、少なくともあなたに逢えてからは
もう1人じゃないって、そう思えたから・・・・)
頬をつたう涙
きっとこれが私の最大限の幸せだったんだろう・・・
でも、次の瞬間
背中にあったイヤな感覚が、スッと離され
肩に重い感覚を覚えた
「何・・・・?」
肩に乗せられたものに、思わず凍りつく
拳銃・・・・・。
その銃口の先には、工藤新一が立っていた
「や、やめ・・・」
志保のその言葉に、ジンは大きく笑う
「今のお前には、最高の土産だろう?
心配しなくても、すぐにお前もラクにしてやるよ」
ジンのその言葉を最後まで聞かずに
志保は走り出していた
目の前にある大切なものを
壊されたりは、したくなかったから
「工藤くん!!」
志保のその叫び声に、新一は気付いてこっちを見
目を見開いた
志保の背後に、拳銃を構えたジンが立っていたのだから
次の瞬間、鈍い銃声の音と同時に、
新一は志保の温かなぬくもりに全身を包まれていた
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