生涯君ヲ愛ス
「・・・・・ち」
遠くの方で、誰かの声が聞こえる
「・・・ち、起きんか新一!」
その言葉にガバっと飛び起きる
「は、博士・・。」
「学校じゃぞ新一」
(あぁ、そうかもう朝・・・・。)
変わりのない朝
変わりのない声
そう、新一は毒薬を飲んで、また戻ってしまったのだ
”江戸川コナン”
その幼児化した姿に・・・・。
「昨日読みかけの推理小説読んでたせいでほとんど寝てねーんだよ」
頭をクシャクシャとしながら、コナンはまた布団の中にもぐり込もうとする
「そうは言ってもな、新一・・・。」
博士の声と同時に、部屋のドアが勢いよく開く音がした
「コナン君!」
「起きないと遅刻ですよ!」
歩美と、光彦の声
そして、満遍の笑みを浮かべる元太
「お、おめーら!?」
驚いたコナンに
歩美のうれしそうな声。
「今日は学校でクリスマス会なんだから!」
・・・そう
あれから10ヶ月がたっていた
あいかわらずの毎日
変わりのない日常
結局は小学生の姿のままクリスマスを迎えていた
コナンは、「しょーがねー・・・」っと言いながら
準備をはじめる
以前と同じように、
追跡メガネに蝶ネクタイ型変声期、時計型麻酔銃。
鏡の向こうの自分自身の姿に、思わず笑った
この姿に戻った所で、灰原に逢えるとは考えにくかったけれど
だけど、何故か
未だにまだ、逢えるような気がするのだから仕方がない
そんな”気”だけで、今もまだ、生きているのだ
博士の家を出て、4人は歩き出した
外はクリスマス一色で、歩美たちは寒さもお構いなしで
楽しそうに笑う。
でも、こういうイベント事があると思い出される人物がいた
「灰原さん、元気かな?」
歩美のその言葉に、一瞬ドキっとする
「仕方ないですよ、親御さんの仕事のせいでアメリカに行ってしまったんですから」
そう、灰原は”親の都合でアメリカに行った”事になっている
その時だけ、暗い沈黙が走るけれど、
こんな時いつも沈黙を破ってくれるのは元太の言葉だった
「でも、アメリカ行っちまっても、
灰原が”少年探偵団の一員”には変わりねーんだから!」
元太の言葉に「うん!」「はい!」っと歩美と光彦がうれしそうにうなずく
そんな3人に、コナンはいつも安心させられていた
(こいつらの中には、”あいつ”は生き続けてんだ)
そう、それだけでとてもうれしかった
「あ!コナンくん。また先生に怒られますよ?ペンダントは校則違反です。」
光彦がコナンが首から下げているペンダントを指さした
「わーってるよ。でもバレねーようにすっから、大丈夫だよ」
コナンはそう言いながらそっとペンダントを出してみせた
「しっかし、どうしてそんな石ころなんか首から下げてんだよ?
大事なもんなのか?」
元太は不思議そうにそれを見ると、首をかしげた
そう、そこにつるされてあるのはあの”ダイアモンド”の原石
博士が石を傷つけないようにと作ってくれたもの
『永遠の絆』の証
「・・・・・大事なもん・・・だな」
少し切なそうなコナンの表情に3人とも目を合わせたが
そのまま、何も聞かずにいた
実際は”聞けなかった”の方が正しいのかもしれない
あまりにも大切に肌身離さず持っていたその石について
触れてはいけないような、そんな気がしたから
「あ!そうだ。蘭お姉さん、赤ちゃん生まれたんだって!」
「え?」
話題を変えた歩美のホクホクとした表情に、コナンは驚いて聞き返した
「何でそんな事しってんだよ?」
「さっきコナン君を誘いに来る時に、毛利のおじさんが嬉しそうに
近所の人に話してるの聞いたの。
女の子で、えっと確か名前は・・・・・・。」
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